展覧会 · The Studio Museum in Harlem · Central Harlem
カプワニ・キワンガ、スタジオ・ミュージアム・イン・ハーレムで新作「BLEED」
カプワニ・キワンガがスタジオ・ミュージアム・イン・ハーレムの2階プロジェクトギャラリーで発表した新作「BLEED」。キルトの暗号模様を、海水・ヤマゴボウ・藍の染料で布に移した site-specific な作品で、2027年4月1日まで。
文・NBT編集部 · 2026-10-16

ハーレムのスタジオ・ミュージアムが、フランスとカナダにルーツを持つアーティスト、カプワニ・キワンガに依頼した新作インスタレーション「BLEED」を、2階のプロジェクトギャラリーで公開している。会期は2026年3月11日から2027年4月1日まで。1年を超える長い展示で、季節をまたいで何度も足を運べる。担当は同館アソシエイト・キュレーターのイェレナ・ケラー。
着想源はキルトの伝統だ。地下鉄道(アンダーグラウンド・レイルロード)の道筋では、物干し綱に掛けられたキルトに重要な情報を伝える暗号が縫い込まれていたと伝えられる。キワンガはその図柄のひとつ、北へ向かう人々を導いたとされる「フライング・ギース」と呼ばれる三角形の連なりを取り上げ、黒、青、深紅のうねりへと置き換えた。黒人コミュニティに受け継がれてきた知識の共有という営みを、布の上に重ねる試みである。
色は三種類の天然染色で生み出された。まだらな黒の布は、大西洋から汲んだ海水で顔料を酸化させたもの。大西洋奴隷貿易を指し示すとともに、海を記憶の目撃者であり保管者として扱う。深紅の円形は北米原産のヤマゴボウの実による。毒性で知られる一方、衣類の染料や、適切に調製すれば薬用にも使われてきた植物だ。1816年に、黒人女性デルフィが奴隷主にこの実を食べさせて毒殺したと疑われた出来事があり、それを自らの意思による行為ととらえて着想を得たという。青いうねりは藍で染められている。藍は西アフリカから伝えられた知識をもつ奴隷にされた人々の強制労働で栽培され、南部のプランテーション経済を支えた。作品では、祖先とのつながりと土地との受け継がれた関係を照らし出す。
使われているのは、時間とともに色が変化しうる「フュージティブ・ダイ(褪色性の染料)」である。そのため作品は固定されたものではなく、時の経過を記録する存在となる。展示期間中に色合いが移ろう可能性もあり、会期の早い時期と終盤で見比べるのも一案だ。
キワンガは1978年カナダのハミルトン生まれで、パリとベルリンを拠点に活動する。歴史的な語りを現在、アーカイブ、未来の可能性と向き合わせ、権力の非対称性が及ぼす影響をたどる。リサーチを土台に、彫刻、インスタレーション、写真、映像、パフォーマンスなど多様な媒体で、見過ごされてきた歴史を扱う。権力の仕組みをそれ自身に向け直す姿勢を、本人は「出口戦略」という言葉で語り、物事を複数の視点から見直し、別の仕方で未来を進む道筋を探るものとして作品を位置づけている。
- 状況
- 開催中
- 会期
- 3月11日 – 4月1日
- 作家
- Kapwani Kiwanga
- 会場
- The Studio Museum in Harlem
144 West 125th Street, New York, NY
Google マップで開く - 見どころ
- 「フライング・ギース」の三角形を黒・青・深紅のうねりに置き換えた布の作品
- 大西洋の海水、ヤマゴボウ、藍という三種の天然染料
- 時間とともに色が変わる褪色性の染料による、変化し続ける作品
- 2026年3月11日から2027年4月1日までの長期展示





