展覧会 · David Zwirner · Chelsea
ネイト・ローマン、デイヴィッド・ツヴィルナーで「鍵」の新作個展
ネイト・ローマンがチェルシーのデイヴィッド・ツヴィルナーで、鍵の形をしたシェイプト・キャンバスの新作を発表。アクセスや排除、複製をめぐる絵画群を10月24日まで展示している。
文・NBT編集部 · 2026-10-16

ニューヨーク在住の作家ネイト・ローマン(1979年生まれ)が、チェルシーのデイヴィッド・ツヴィルナー19丁目スペースで個展「Hanging Out」を開いている。今回初めて取り組んだのは、鍵の形に切り出したシェイプト・キャンバスの連作だ。会期は10月24日まで。
ローマンは美術史、報道、大衆メディアから拾い上げたイメージを、絵画、彫刻、インスタレーションへと作り替えてきた。ハート、木の形のカーフレッシュナー、ポピー、地図など、誰もが見知った形のキャンバスを繰り返し用い、そのたびに表面の描き方を変えるのが特徴である。鍵の作品もこの延長にあり、実物そっくりに描いたものから、ほとんど抽象に近い図式的なものまで幅がある。作家自身が撮影した写真を転写したものもあれば、金物店で売られている派手な柄の鍵カバーを取り入れたものもある。2枚組のシルクスクリーン作品《Nobody's Home》は、まだ削られる前の2本の鍵を描いた広告を元にしている。
鍵は複製されるために存在する物であり、コピーと再流通を重ねるローマンのイメージのあり方とよく重なる。連作として並べると、1つのひな形に少しずつ手を加えた変奏が連なる。表面にはステラを思わせるハードエッジの抽象、ウォーホルのような反復、デュシャンのレディメイドの平板さなど、それぞれ異なる絵画の言語が宿る。
個人的な逸話も作品に入り込んでいる。ニューヨークに来て間もない頃、友人から渡された家の合鍵はレイヴ文化を思わせる黄と青のスマイル柄で、当時ローマンが描いていたスマイリー絵画への目配せでもあった。現在の自宅玄関の鍵を写した作品や、リオ・デ・ジャネイロの植物園でベンチに刻まれた名前を撮った写真から描き起こし、親友の非常用の合鍵の形にした作品もある。ギリシャのスペッツェス島にあるブブリーナ博物館の庭で見つけた落書きを参照した作品《Bouboulinamou》も出ている。この形の発想には、2008年に穴とキーリングで構成したドレスを手がけた故デザイナー、ベンジャミン・チョーへの追想もあるという。
ニューヨークで30年暮らしてきた作家にとって、鍵は不動産と所有、誰を入れ誰を締め出すかという問題にもつながる。24時間営業の鍵屋や合鍵店が成り立つ街の経済も背景にある。鍵が新しい技術に取って代わられつつある今、その象徴性を問い直す展示でもある。
ローマンは2019年にデイヴィッド・ツヴィルナーに加わり、2025年にはパリのウジェーヌ・ドラクロワ国立美術館で、ドラクロワの作品と並べた個展を行った。作品はニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、グッゲンハイム美術館、ホイットニー美術館などに収蔵されている。
- 状況
- まもなく終了
- 会期
- 9月10日 – 10月24日
- 作家
- Nate Lowman
- 会場
- David Zwirner
525 West 19th Street, New York, NY
Google マップで開く - 見どころ
- 鍵の形に切り出したシェイプト・キャンバスの新連作
- シルクスクリーンの2枚組《Nobody's Home》(2026)
- 作家自身の玄関の鍵や友人の合鍵に基づく作品
- ギリシャ・スペッツェス島の落書きを参照した《Bouboulinamou》





