展覧会 · Galerie Lelong · Chelsea
アルフレド・ジャー「A Logo for America, 1987」ガリ・ルロンで開催中
チリ出身のアルフレド・ジャーが1987年にタイムズスクエアで発表した代表作を軸にした個展。デジタル化された原作アニメーション、初公開の絵コンテ、マイアミビーチでの上映記録などを通して「アメリカ」の意味を問う。10月24日まで。
文・NBT編集部 · 2026-10-16

チェルシーのガリ・ルロン・ニューヨークで、アルフレド・ジャーの個展「A Logo for America, 1987」が10月24日まで開かれている。1987年4月、パブリック・アート・ファンドの依頼でタイムズスクエアの電光掲示板に流れたアニメーション作品を、成立から現在までたどる内容だ。
ジャーは1955年生まれのチリ出身。建築家としての訓練を受けたアーティストで、ピノチェト政権下のチリでは街頭で人々に「あなたは幸せですか?」と問うパブリック・プロジェクトを行った。1982年にニューヨークへ移り、この作品を発表したのは移住から5年後、31歳のときである。パブリック・アート・ファンドのシリーズ「Messages to the Public」の一環で、広告が並ぶ掲示板に約42秒の映像が挟み込まれた。「This Is Not America」の文字を重ねた米国地図、続いて星条旗、さらにAmericaの「R」が南北アメリカ大陸の地図に変わる、という構成だった。アメリカ合衆国を指して「America」と呼ぶ習慣が、大陸にある他の国々を見えなくしている、という指摘である。
会場の中心には、暗く囲われた空間に大型で映し出される、新たにデジタル化された原作アニメーションがある。原作の絵コンテのドローイングは今回が初公開で、制作過程をうかがえる。周囲の壁には、写真のセット、ライトボックス、映像が並ぶ。2014年のタイムズスクエアでの再上映、2016年の作品、2018年にマイアミビーチ沖のはしけで上映された版、現代のテレビ画面での展開などを通じ、作品が媒体や文脈を変えながら生き続けてきた様子がわかる。1987年の発想やイメージが広く文化や政治の場に浸透していった例を示す映像も選ばれている。
2018年の《Welcome to the USA (TIME)》や2023年の《How Should America Lead? (The Economist)》など、雑誌表紙に関わる作品も出ている。米国建国250周年の年に開かれる本展は、「アメリカ人であるとはどういうことか」という問いを改めて投げかける。ジャーは同時期にヴェネチア・ビエンナーレ第61回国際美術展「In Minor Keys」(コヨ・クオ キュレーション)にも参加している。
英語圏では「America=米国」という言い方が当たり前だが、日本語でも「アメリカ」は日常的に米国を指す。身近な言葉づかいを見直すきっかけとして、日本の読者にも通じる展示だろう。会期は残りわずかなので、訪れるなら早めに。
- 状況
- まもなく終了
- 会期
- 9月10日 – 10月24日
- 作家
- Alfredo Jaar
- 会場
- Galerie Lelong
528 West 26th Street, New York, NY
Google マップで開く - 見どころ
- 新たにデジタル化された1987年の原作アニメーションを暗い専用空間で大型上映
- 初公開となる原作の絵コンテのドローイング
- マイアミビーチ沖のはしけでの上映(2018年)など、その後の展開を記録した写真・ライトボックス・映像
- 《Welcome to the USA (TIME)》《How Should America Lead? (The Economist)》など雑誌を題材にした作品





