展覧会 · Jack Shainman Gallery · Chelsea
ベッキー・サス、ジャック・シャインマンで個展「Night House」
フィラデルフィア拠点のベッキー・サスが、チェルシーのジャック・シャインマン・ギャラリーで新作展を開催。黒や灰色、深い青で描く夜の室内と庭が、記憶と家庭の意味を静かに問いかける。10月31日まで。
文・NBT編集部 · 2026-10-16

ベッキー・サスは1980年フィラデルフィア生まれで、現在も同地を拠点とする画家です。ウィリアムズ大学で学士号、カリフォルニア大学バークレー校で美術修士号を取得し、2013年にはスコウヒガン絵画彫刻学校に参加しました。フィラデルフィアのPew Center for Arts & Heritageによるペュー・フェローシップも受けています。祖父母の家や小説に登場する想像上の部屋など、家庭の室内空間を主題にしてきた作家です。
チェルシーのジャック・シャインマン・ギャラリーで開催中の「Night House」は、その新作を集めた展覧会です。これまでのサスは明るく彩度の高い色彩で知られ、画面全体を満たす光のせいで、昼夜といった時間帯の区別があいまいでした。今回は黒、灰色、深い青を幾重にも重ね、光の繊細な変化で室内を描き出します。眠りや静止の時間とされる夜を、見過ごされがちなものを見つめ直す枠組みとして用いている点が、これまでとの大きな違いです。
人物は描かれませんが、柄の込み入った壁紙、本や小物であふれた棚など、細部の描写が不在の人々の気配を伝えます。建築の平坦化や誇張された比率、ゆがんだ遠近法は、記憶の中の像が事実と虚構のあいだで揺れ動くことを示します。サスはその不安定さを退けず、記憶の可変性をそのまま受け入れています。暗い色の重なりは、目が慣れるにつれて画面の奥行きが少しずつ現れるように作られています。
展覧会は、月光に照らされた家の外観を描く《Night Garden》から始まり、続く作品で室内をのぞき込む構成です。窓が繰り返し登場し、花咲く景色と凍てついた景色の両方を室内に招き入れます。木々や雪、氷の描写は壁紙の模様とも響き合い、整えられた室内と外の自然を結びます。絵画、彫像、陶器、小さな装飾品などの品々は、何が価値あるものとして残されるのかを問いかけます。
ほかに《Night House Living Room》《Night House Garret》《Night House Lulu》、トーマス・マンの小説に由来する《The Magic Mountain》、ブレイクロックやヴァロットンに倣った《Moonlight》《Sunset》、ショパンのノクターンのアルバム、マティスの絵をもとにしたパズルを描いた作品などが並びます。会期は10月31日までです。
- 状況
- 開催中
- 会期
- 9月10日 – 10月31日
- 作家
- Becky Suss
- 会場
- Jack Shainman Gallery
513 West 20th Street, New York, NY
Google マップで開く - 見どころ
- 月光に照らされた家の外観を描く《Night Garden》が導入となる
- 黒・灰色・深い青を重ねた、目が慣れるほど奥行きが現れる画面
- 《Moonlight after Blakelock》《Sunset After Vallotton》など美術史を参照した作品
- 窓の外の花盛りや雪景色と、壁紙の模様が響き合う室内





