展覧会 · Luhring Augustine · Chelsea
ジェイソン・モラン、NYチェルシーのルーリング・オーガスティンで個展「STACKS」
ジャズピアニストで美術家のジェイソン・モランが、チェルシーのルーリング・オーガスティンで個展「STACKS」を開催。積み重ねたピアノの新作彫刻、和紙に鍵盤の痕跡を写した作品、ジャズ資料の収集品を展示する。12月19日まで。
文・NBT編集部 · 2026-11-06
ジェイソン・モランは1975年テキサス州ヒューストン生まれのジャズピアニスト、作曲家であり、美術家でもある。2010年にマッカーサー・フェローに選ばれ、2022年にはアメリカ芸術科学アカデミーの会員となった。2011年から2025年までケネディ・センターのジャズ部門でアーティスティック・ディレクターを務め、現在はパーク・アベニュー・アーモリーのキュレーターを務めている。トリオ「ザ・バンドワゴン」ではブルーノート・レコードから作品を発表し、自身のレーベル「Yes Records」も持つ。アドリアン・パイパー、ジョーン・ジョナス、グレン・ライゴン、カラ・ウォーカーら多くの美術家とも協働してきた。
「STACKS」は、同ギャラリーでの3度目の個展にあたる新作・近作の展示である。ジャズを形づくってきた歴史、物、身振り、思想を、紙の作品、彫刻、映像など幅広い素材で探る。モランの実践は音楽と言語の関係に根ざしており、即興と実験を通じて、先達の音楽家や美術家と対話しながら、音、イメージ、パフォーマンス、物質のあいだを行き来する。
展示の中心となるのは、小さなアップライトのパーラー・ピアノ2台を、不安定に上下に積み上げた新作彫刻だ。鏡像のように反転させて重ねることで、身近な楽器が記念碑的な建築物のような姿に変わる。ジャズの歴史におけるピアノの重みと、世代を超えて積み重なっていく層の重力を思わせる作品である。
紙の作品は、粉末顔料を塗った鍵盤に薄い和紙(雁皮紙)を載せ、演奏しながら指で押さえて制作される。指の速さ、圧力、間(ま)が顔料の痕跡として紙に残る。和音は塊として、反復するフレーズは濃密な集積として現れ、沈黙は余白のまま残る。音が響き、減衰していくさまを思わせる画面となる。日本の紙が使われている点も、日本の読者には興味深いだろう。
会場にはモランが長年集めてきたジャズ関連の収集品も並ぶ。ハーレム・ヘルファイターズが手作りした旗から、セロニアス・モンクの肖像をあしらった切手シートまで、物同士が互いに即興で響き合うような構成になっている。さらに、写真家・映画作家のアリ・マルコポロスがモランと協働した新作映像も上映される。音の質感とイメージの関係という共通の関心が表れた作品である。
- 見どころ
- 2台のアップライトピアノを反転させて積み上げた新作彫刻
- 顔料を塗った鍵盤と雁皮紙で演奏の痕跡を写し取る紙の作品
- ハーレム・ヘルファイターズの手作り旗など、ジャズ関連の収集品
- アリ・マルコポロスとの協働による新作映像







