展覧会 · Andrew Kreps Gallery · Chinatown

ケネス・ヴィクター・ヤング、アンドリュー・クレップス・ギャラリーで初期「オーブ」絵画展

ワシントン・カラースクールの画家ケネス・ヴィクター・ヤング(1933–2017)の1970〜72年作を紹介する展覧会。柔らかな輪郭の球体が色面に浮かぶ「オーブ」絵画を軸に構成。チャイナタウンの394 Broadwayで10月31日まで。

文・NBT編集部 · 2026-10-16

ケネス・ヴィクター・ヤング、アンドリュー・クレップス・ギャラリーで初期「オーブ」絵画展
Kenneth Victor Young, Works 1970 - 1972 September 18 – October 31, 2026, Andrew Kreps Gallery, 394 Broadway Photo: Elisabeth Bernstein — Andrew Kreps Gallery

チャイナタウンのアンドリュー・クレップス・ギャラリー(394 Broadway)で、ケネス・ヴィクター・ヤング(1933年ケンタッキー州ルイビル生まれ、2017年ワシントンD.C.没)の絵画展「Works 1970 – 1972」が開かれている。会期は10月31日まで。エドワード・タイラー・ナヒム・ファインアートとの共同企画で、1970年代初頭の作品のなかでも、カラーフィールド・ペインティングの語彙を押し広げたとされる「オーブ」シリーズに焦点を当てる。

ヤングはルイビル大学で物理学と化学工学を学び、その頃にサム・ギリアム、ボブ・トンプソン、ロバート・ダグラスと親交を結んだ。若手の黒人作家に発表の機会と交流の場をつくることを目的としたコレクティブ「ギャラリー・エンタープライズ」にも加わり、地元の作家たちとの対話を通して科学から絵画へと進路を移していく。1964年にワシントンD.C.へ移ると、ジーン・デイヴィス、モリス・ルイス、ケネス・ノーランドらワシントン・カラースクールの作家と知り合った。未張りで下地を塗らないキャンバスを床や傾斜面に置き、薄めたアクリル絵具を流して繊維に染み込ませる「ステイン・ペインティング」の手法を、ヤングも用いている。ただ、ヤングやギリアム、アルマ・トーマスは、公民権運動期の政治状況や、ヤングとギリアムのワシントン到着が遅かったことなどから、この動向の初期の語りでは見落とされてきた。

1960年代末までに形になった「オーブ」の絵画では、輪郭の柔らかい有機的な形が色の場に浮かぶ。不透明度、大きさ、密度はさまざまで、そこに生まれる動きや奥行きは、制作中にいつもスタジオで流れていたジャズへの愛着と結びついている。反復と即興を重ねる技法やエネルギッシュな構図は、ジャズのソロの組み立てに通じる。一方、分子を思わせる姿には物理学や化学工学の学びが重なり、顕微鏡の世界とも天体とも読める。スポンジ、スプレーボトル、エアブラシ、従来の筆と道具も広げ、光輪をまとった物体や羽根状の形、色の融合を生み出した。偶然と制御の均衡のなかに、ヤングが語った「混沌とした存在のなかの統一」への願いが表れている。

ヤングは30年以上にわたりスミソニアン協会で展示デザイナーを務め、米国情報局のために海外でも展覧会を手がけた。1973年から85年まではコーコラン美術学校で教え、のちにデューク・エリントン芸術学校で展示デザインを教えた。1974年にはワシントンのコーコラン・ギャラリー・オブ・アートで個展を開催。作品はナショナル・ギャラリー・オブ・アート、スミソニアン・アメリカ美術館、グッゲンハイム美術館、ペレス美術館マイアミなどに収蔵されている。9月からはペンシルベニア州のバックネル大学サメック美術館でも個展が開かれている。

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状況
開催中
会期
9月18日 – 10月31日
作家
Kenneth Victor Young
会場
Andrew Kreps Gallery
394 Broadway, New York, NY
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見どころ
  • 1970〜72年の「オーブ」絵画:柔らかな輪郭の球体が色面に浮かぶ代表シリーズ
  • 未張り・下地なしのキャンバスに薄めたアクリルを染み込ませるステイン技法
  • ジャズの即興性と、物理学・化学工学の経験が重なる画面
  • ワシントン・カラースクールのなかで見落とされてきた黒人作家の再評価