展覧会 · Norr Cohan · Tribeca

ニューヨーク・トライベッカでトゥアン・アンドリュー・グエン個展「Sacred Forest」

トライベッカのNorr Cohanで、トゥアン・アンドリュー・グエンの個展が10月30日に開幕。ベトナム・クアンチ省の砲弾から作った彫刻と新作映画を組み合わせ、戦争の痕跡が残る森を聴く場をつくる。

文・NBT編集部 · 2026-10-30

ニューヨーク・トライベッカでトゥアン・アンドリュー・グエン個展「Sacred Forest」
Norr Cohan

トライベッカのウォーカー・ストリートにあるNorr Cohanで、2026年10月30日から12月19日まで、トゥアン・アンドリュー・グエンの新作展「Sacred Forest / Rừng Thiêng」が開かれる。同ギャラリーでの4度目の個展で、48番地と52番地の2会場を使い、映像作品と、戦争の遺物を癒しの物体へと作り替える彫刻を組み合わせて見せる。

最初に目にするのは、天井から吊られたモビールの群れだ。素材は、ベトナム中部クアンチ省で回収された57ミリ砲弾。一つひとつが特定の共鳴周波数に調律されており、森の揺れ動きと、土地に影響を及ぼし続ける目に見えない力を音で響かせる。音はギャラリー全体に広がり、記憶と内省を促す呼びかけになる。

次の部屋は、高さ3.5メートルを超える大型彫刻《Tiger Mountain》(2026)のための空間である。アーチはクアンチの険しい山並みを思わせる。この地域は旧非武装地帯(DMZ)のすぐ南にあたり、ベトナム戦争中、米海兵隊はタイガー・トゥース山(Động Voi Mẹp)のような峰を拠点にした。それ以前、深い密林には野生の虎が棲み、山の守り手「Chúa Sơn Lâm(森の王)」として敬われていた。アーチからは、不発弾処理を終えた爆弾の外殻3つが鏡面に磨かれ、サウンドヒーラーとの協働で432Hzに調律された鐘として下がる。《Tiger Tooth》(2026)には鐘が1つ吊られ、軍の拠点名を直接題に引いている。

さらに奥には、壁掛けの円形作品《Fire Tops》(2026、直径240センチ)がある。砲弾の薬莢を丸めて叩いた3,000枚以上の小さな円盤で構成され、表面は竜の鱗状の甲冑を思わせる。作家は酸化と緑青を絵画的に操り、ターコイズや焦げ茶に蛍光の安全オレンジを差す。緑青の進行を早めることで、時間の経過とその痕跡を真鍮に刻んでいる。

展覧会の中心は、新作映画《Sacred Forest / Rừng Thiêng》(2026)の初公開だ。舞台はクアンチ省の山岳地帯ダクロン。戦争の名残が土に埋まり、先住民の精神信仰が人と自然の関わりを今も支えている。出演はブル=ヴァンキエウ族の人々。不発弾を森から取り除く仕事に命をかける両親を持つ8歳の少女クエンが、生と死のあわいで、絶滅危惧種サオラ(「アジアのユニコーン」)の姿をした精霊に導かれる。人と動物、生者と死者、記憶と神話の境が溶けていく物語だ。音楽は手作りの伝統楽器による現地録音で、人と森の対話を形づくる。精霊は大理石のサオラの頭部としても展示され、角は真鍮の不発弾から作られている。会場には川石も置かれ、映画の風景を持ち込む。

場所

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会期

10月30日 – 12月19日開催中

作家

Tuan Andrew Nguyen

開館時間

火〜土 10:00〜18:00
見どころ
  • 57ミリ砲弾から作った吊りモビールが奏でる、森のような音のインスタレーション
  • 高さ3.5m超の大型彫刻《Tiger Mountain》と、432Hzに調律された爆弾外殻の鐘
  • 3,000枚以上の真鍮の円盤でできた直径240cmの《Fire Tops》
  • ブル=ヴァンキエウ族が出演する新作映画の初公開(4K、5.1サラウンド)